膝行と身体の声

膝行という動作を目にしたとき、多くの人は「膝を痛めそうだ」と思うかもしれない。確かに、最初は膝に負担を感じるだろう。だが、身体の使い方がわかれば、その痛みは不思議と消える。むしろ、滑らかに、自然に膝が前へと運ばれていく。
私自身、高校時代には無理を重ねた。稽古を積みすぎてオスグッドになった経験がある。今思えば、身体の使い方を知らないまま、量だけを重ねた稽古だった。技を深めるどころか、身体を痛めつけるだけになってしまった。そこから学んだのは、「何よりもまず、身体の使い方を知ることが大切だ」ということだ。
もちろん、無理な稽古によってしか得られない気づきもある。限界を超えたところでしか見えない世界も確かにある。だが、武道を伝える立場に立つなら、技術はできる限り負担なく、誰にでも開かれた方法で伝えていきたいと思う。
日本の文化には、技を言葉にせず、感覚で伝えようとする側面がある。職人気質と呼ばれるものだ。その沈黙が、武道の神秘性や多様な流派を生んできたのだろう。しかし、時代は変わった。今は言葉を使い、丁寧に説明することで、多くの人が短い時間で理解に辿り着ける。初段の実力であれば、一年もあれば充分に養えるはずだ。
膝行も同じである。身体操作がしっかりと身についていれば、膝を痛めることなく、むしろ軽やかに行える。そこには苦もなく、ただ身体の声に従う自然さがある。


