恐怖と居着き

恐怖は人を縛りつける。
攻撃を受ける恐怖、失敗する恐怖、他人の評価を気にする恐怖──そのどれもが心を固め、身体を硬直させる。
恐怖から生まれる居着きは、武道において致命的であり、動きの自由を奪ってしまう。

だから稽古の目的は、恐怖を消し去ることではない。
恐怖を抱えたままでも動ける自分を育てることにある。

呼吸を深めて緊張を溶かし、繰り返しで未知を既知に変えていく。
遊びを取り入れて心を軽やかにし、捨て身の覚悟で境界を踏み越える。
その一つひとつが、恐怖と共に歩くための道具だ。

恐怖はなくならない。
しかし恐怖に居着かず、抱えたままでも自然に応じられる身体と心。
その磨き直しこそが、武道における本当の稽古であり、生きる術でもある。
そこに漂う気配は、観る者に「自由とはこういうものか」と思わせる静かな美しさを持っている。